では、どうすればいいというのです
文は、ゼロから生じる物ではないと思います。
定期的に一定量の文を脳に入れてあげないと、よい文が出てこなくなります。
無理に出すと、ろくな事になりません。
とりこんで、消化して、出す。
文も世の中を巡り巡っていくモノのような気がします。
ここのところ諸般の事情により絶食状態が続いていたので、ため食いモードに切り替えました。
とはいえ、入れる文は良いモノを厳選したいところです。
今回選んだのは、宮部みゆき著「楽園」。
この物語は映画にもなった大作「模倣犯」のその後の世界が舞台です。
主人公は前作で犯人逮捕のきっかけを作った女性ライター。
物語は子供を持たない既婚女性の目で、さまざまな親子の姿が書かれていきます。
時効後に発覚した殺人事件、その事実の究明が物語の主たる流れなのですが、
そこに絡む、いろいろな関係の「親子」。その姿を通して、
「世の暗黒面に落ちていく(もしくは落ちた)家族がいるとき、身内はどうすればいいのか」
この問題に対する「あるはずのない答」について読み手は考えさせられます。
(そして最後はタイトルの言葉になるわけです。)
子どもがいる今、これはあまりに怖い作品でした。
自分が上記の問題に対して、決断を下す立場になる可能性がゼロではないからです。
読んでいて身につまされます。10月には2児の父って立場になるので、余計です。
今は怖ろしいほどに可愛い2才の息子も、何かの拍子に暗黒面に落ちるかも知れない。それを食い止められるのか。引き上げてあげられるのか。
そして、その問題に「ある究極的な方法」で、ピリオドを打てるのか。
考えが巡るだけです。答えなんか出てきません。でも、得たものはある気がしますね。
もう一つ思ったのが「独身時代にも読みたかった」ということです。
で、今と比較して印象にどれだけ差があるのか、体験してみたかった。
オススメできる深い作品ですが(単純に物語としてみると、世間では賛否両論渦巻いてますが)、
少子化に拍車をかけないだろうかと、心配になりますね。