ヘルベチカ
最近見たDVDの話を少し。
今回取り上げるのは「ヘルベチカ?世界を魅了する書体」です。こんなデザインチックな話題を私が書いてしまってすみません。
ここ数年、映画にはまっていて、洋の東西を問わず、単館系のマニアックなものまで含めて沢山見てきた私。それでも、このDVDは知り合いの薦めがなければまず見ることがなかったと思われる1作で、おそらく関係する業界の方以外、ほとんどの方がこの作品の存在にすら気づかないと思いますので紹介します。
さて、副題からヘルベチカが書体であることは分かっていただけたと思います。しかし、これだけではなぜDVDになるのかと感じる方もいると思いますので、もう少し補足しておきます。ヘルベチカは50年以上前にスイスの鋳造所が発表したもので、欧米では今でも最もメジャーな書体の1つとして親しまれています。アルファベットが公用文字ではない日本でさえ、さまざまな企業、公共団体が広告や案内表示などに利用し、例えば駅の看板、有名自動車メーカーや衣料品ブランドのロゴなど街のあちらこちらで見ることができます。
DVDはヘルベチカのある風景やインタビューで構成されています。インタビューでは、さまざまなデザイナーや評論家が、誕生の歴史から長所・短所、半世紀以上も愛される理由まで多くの謎や秘密を明かしてくれます。
私もライターという仕事柄、文字とは付き合っているのですが、フォントについてじっくりと向き合う機会はなかったので、とても良い機会になりました。 そして、看板や広告を見る時、これまでは内容と全体の雰囲気などにばかりに目が行きがちでしたが、文字の1つひとつにまで興味が湧くようになりました。何気なく目の前を通りすぎていたものや見落としてたものを、とても面白く感じるようにさせてくれたというのは実に素晴らしいことです。ヘルベチカという書体がそうであるように、このDVDも、それ自体が強烈なインパクトや感動を生む要素を持っている訳ではありません。しかし、ともに名作と呼べるものである。私はそう感じました。